電子流と磁場による導体の受ける力の向きについて

導体中に電子流があるときに磁場を受けると、その導体に力が発生することは、従来の仮想電流によってもよく知られた事実だと思います。

ここでは、導体中の電子の流れ方向に注目して、磁場によって導体が受ける力の向きについて、簡単な実験によって確かめてみたいと思います。

実験にあたっては、バッテリー(ON/OFFのスイッチが付いています)、磁石、電線などを用意します。ここで、電線に大きな電子流を流すために、抵抗器を回路中に置いています。

実験回路は、概略以下のようなものです。

実験回路

可動電線両端の電圧は、メーター読みで約35ボルト弱ぐらいでした。また、抵抗器の抵抗値は実測で16オーム程度でしたので、回路には約2.1アンペア強の電子流が流れるものと考えられます。 ここで、「電圧」という言葉を使いましたが、これは従来からの仮想電流を主体にした、プラス側から仮想電流を「圧す」という概念に基づく慣例的な使い方です。電子流を主体にする場合には、電子を引っ張る力ということで、「電引」と言った方がふさわしいと考えておりますが、ここでは慣例的に「電圧」にしております。

可動電線両端の電圧値(バッテリーONのとき)

また、回路中には可動電線を置き、その直下に磁石を置いて、電子流を流したときの力の向きを確かめてみます。

まずは、N極の磁石を可動電線に、できるだけ近づけて置いたときです。

電子流を流す前(N極)バッテリーOFFのとき

電子流を流した後(N極)バッテリーONのとき

電子流を流すと、画面の中央に配置していた1.6mm径の可動電線が、力を受けて画面向かって左側に転がりました。

次に、S極の磁石を可動電線に、できるだけ近づけて置いたときです。

電子流を流す前(S極)バッテリーOFFのとき

電子流を流した後(S極)バッテリーONのとき

電子流を流すと、画面の中央に配置していた1.6mm径の可動電線が、力を受けて画面向かって右側に転がりました。

以上のことから、電子流を主体に考えた場合には、下図のように右手の中指を電子流の向き、人指し指をN極、親指を導体が受ける力とすれば、それぞれの指を90度に直交させるように考えれば、電子流、磁場、力のそれぞれの関係を理解できることが分かります。

これは、従来からの仮想電流を主体にした磁場と力の関係において、フレミングの左手の法則に対応するものと考えられます。

ここで、電子流を主体に考えた場合の利点の一つを挙げたいと思います。陰極線の実験を学生時代に物理の実験で見たことのある方も多いと思いますが、これは現在ではインターネット上の動画や静止画などで、数多くの実験結果を見ることもできると思います。この実験で、陰極線に磁石を近づけたときに、電子の流れが力を受けて曲がりますが、その曲がり方に今回の結果は、よく合っていることが直接的にも分かります。

(注意)簡単ではありますが、「電引」のイメージとしては、下図のようにプラスの電気に帯電した電荷が、マイナスの電気を帯びた電子を引き付ける力ということだと考えれば良いと思います。

今回の実験にあたって、テスターの内部抵抗値(数メガオーム)が、測定回路の抵抗値(十数オーム)と比べて十分に大きいと考え、テスターの読取り値を単純に回路抵抗値で割った値を大体の電子流の目安としました。