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電波の発生について

今日、電波はラジオ、テレビ(地デジ、衛星放送)をはじめ、スマホ(携帯電話、無線インターネット)、電波時計、電波調理機器、自動車関連(ETC、スマートキー、キーレスエントリー)など、私達の身近な生活に、計り知れないほどの恩恵をもたらしていることは、周知のことだと思います。 電波自体は目には見えませんが、もはや現代人がその存在を疑うことはないでしょう。 電波は一般に、導体中の動いている電子の大きさや、その向きが高速に変化することによって、空間中に放射が起こる現象だと考えられます。また、電子の流れる大きさが大きいほど、強い電波が発生することも分かっています。 例外的に雷などは、絶縁体である空気中に絶縁破壊するほどの非常に大きい電気の力が発生することで、空気中と大地や建物の避雷針などの間を瞬間的に電子が流れて、電波を発生させることなどもあります。

また、電波の性質を表すのに周波数というものが使われます。これは電波が空間を振動しながら伝わるときの、振動数でもあります。そして電波の周波数は、発生源である導体中の電子が、一秒間に何回変化を起こすかということに対応してると考えられますので、 このことを確かめるために、以下のような簡単な実験を考えました。

AM電波発生の実験装置

実験には、高周波を発生させるためのAM変調機能付き発振器を使います。この発振器に、人間の可聴音域である低周波をAM変調させて、近くにあるラジオ(AM受信機)からこの低周波音が出ているかを確認します。 このとき、発振器から出るAM変調された高周波の周波数を正確に知るために、周波数カウンターをつないでおきます。AMラジオから音を聞くためには、AM変調を行う必要がありますが、AMとはAmplitude-Modulationの略で、日本語では振幅変調といわれます。 この概念は以下の図にあるように、高周波信号に低周波信号を重ね合わせて、電波を発生させます。以下の概念図では、正弦波や三角波で描いていますが、今回の実験では低周波にはタイマーIC555からの方形波(矩形波)を発振器(Fuction-Generator XR-2206)の入力とし、 出力の高周波にも方形波を使用して実験しました。(発振器側も高周波では数kHzの変動があり、DSP受信機側も9kHzごとの設定のため、送受信間でわずかな周波数ズレはあります)

実験の様子

FM電波発生の実験装置

次の実験では、FMワイヤレスマイク(イーケイジャパン社製)と音楽プレイヤーを使います。音楽プレイヤーの音声(MIDI作成した音楽)をFMワイヤレスマイクのエレクトレットコンデンサマイクで拾って、その電波を受信機で受けて、受信機のスピーカーで鳴らしてみます。FMとはFrequency-Modulationの略で、日本語では周波数変調といわれます。 このFMワイヤレスマイクの発振にはコルピッツ発振回路を採用していて、発振周波数は可変式コイルのコアにより76~90MHzまで変更できます。今回は79.0MHz付近(実際には78.89MHz~79.11MHzまで微妙に変化している)に調整しました。以下に製品規定の電源1.5V時の搬送波を実際に測定した波形を示します。

FM変調では、発振高周波を中心に低周波音声信号に対す周波数が上下に偏移されます。このため、FM変調された送信時の搬送波は疎密波といわれるように、周波数が音声信号に従って時間的に変位します。

実験の様子

PCM電波発生の実験装置

3番目の実験では、トイラジコン送受信機(kyosho egg製)を使います。40MHz帯の電波を使う送信機から4種類のスイッチを押したときに、受信機側でそれに対応するLEDを光らせるということをやってみます。 このラジコン送信機の発振にはピアースBC発振回路(トランジスタのベースとコレクタ間に水晶発振子を接続したもの)を採用していて、水晶発振子を用いているため、周波数の可変はできませんが、安定した搬送波の送出ができるという特徴があります。 送信側の4種類のスイッチに対応した動作司令コード(パルス)をつくり出し、搬送波をこのパルスで変調して、アンテナから送信します。そして受信側では、40MHz帯のLC同調回路を通じて、動作指令パルスを解読して、LEDを光らせています。 PCMとはPulse-Code-Modulationの略で、日本語ではパルス符号変調といわれます。 以下に搬送波の波形を示します。

実際にアンテナから送出される波形は、以下のように周波数500Hz(デューティ比3:1)の制御コードと、周波数1KHz(デューティ比1:1)の動作司令コードが、スイッチを押している間、40MHzのパルス変調信号として交互に送出されます。

実験の様子

VIDEO電波発生の実験装置

4番目の実験では、地上アナログ放送(既に2011年7月に停波)にも使われていた電波を使って、動画像を送受信してみます。カメラで捕らえた動画像を家庭用ビデオのアンテナ出力端子から電波を発生させ、それを地上アナログテレビ受信機(アップコンバーター付き)で受信したものをPC用ディスプレイで表示させてみます。 90年代に製造された家庭用ビデオデッキ(Panasonic製)は、アナログ放送に使われるVHF用の発振・変調モジュールが内臓されています。このアンテナ出力は、同軸ケーブルでテレビと接続するためのもので、非常に微弱なものではありますが、電波を放射させることもできます。 しかし、この微弱な電波ではそのまま受信用チューナー(KEIAN製)の入力としてはあまりにも小さいので、入力の前にブースター(日本アンテナ製)を接続して、アンテナ出力からの電波を捉えています。このアナログビデオ信号はNTSC形式という(日本、米国、韓国などで採用されている)もので、毎秒30枚の画像をインタレース方式により表示することができます。 カメラとしては、NTSC信号出力のできる市販のデジタルカメラ(富士フィルム製)を使用して、ビデオデッキの外部入力端子に接続しています。今回の実験ではVHFのアナログ2CHを使っていますので、映像搬送波の周波数は97.25MHzです。 また、NTSC信号の一例として水平同期信号の波形は、以下のように約63.5μs毎にに発生しています。水平映像信号には、輝度信号以外にカラー信号も含まれています。

NTSC信号の垂直同期信号の例を以下に示します。地上アナログ放送のときには、垂直帰線消去期間中に文字データを送る、テレビ文字放送なども行われていました。

実験の様子(無音です)

今回は無音で実験を行いましたが、音声も映像と同時に送ることができるのは勿論です。実際VHFのアナログ2CHで音声信号を送ったときに、ワイドFM対応ラジオの受信周波数101.75MHzで聞こえることも確認しています。現在は、高速デジタル通信が主流になっていますが、デジタル通信技術といっても、高度なアナログ技術の上に実現されていることを忘れてはいけないでしょう。

以上の実験から電波の発生は、電子回路の発振という電子が高速に変化することにより、空間にエネルギーが放射される現象であることが確かめられました。なお、このAM/FM変調実験での電波放射は、商用周波数帯を使用しましたが、AM実験では数十センチ程度まで、FM実験では15メートル(製品規定)しか届かないような微弱なものですので、日本国内の電波法には抵触しないと考えられます。 また、PCM変調実験でも、日本国内で認められているラジコン周波数帯を使用して、出力も製品規定の微弱なものであるため、電波法には抵触しないと考えられます。同様にVIDEO実験でも、出力が極微弱のため、電波法に抵触する問題はないと考えられます。

現在、電波はその周波数によって、反射性、透過直進性などのさまざまな性質を持っていることが、確かめられています。周波数によっては、電離層と大地(海上)間を交互に反射しながら、遠くまで届くものや、衛星通信などのように透過直進性の高い周波数帯が使われているものなどがあります。 一般に周波数が高くなると透過直進する性質が大きくなることは、電波自体のエネルギーが大きくなることでもあり、光のエネルギーが振動数に比例する関係によく似ていることから、電波も光と同じ性質を持っているものとみられます。(ただし、物質の原子のように光子や電波子というものは、質量の有無問題などまだ物理的に特定はされてはいないようです)