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電子流による磁界/磁場の方向性について

導体中に電子が流れることによって、その周囲に発生する一次的な磁界/磁場の方向を方位磁針を使った実験で確かめてみました。使用する方位磁針は、以下のようなものです。

市販の方位磁針

実験は以下のような装置を使います。導体の周囲に90度づつずらして4個ほど方位磁針を配置しました。その導体には安定化電源から電子流を流してやります。このとき強い電子の流れをつくるために導体を3回巻いて、そこに約10アンペア×3本分の電子流をつくります。導体中の電子の流れは電源のマイナス側からプラス側に向かって流れます。

まず、この実験装置に電子の流れが何もないときには、4個の方位磁針の赤い部分はすべて北を向いています。ここで赤い部分が北を向いているということは、磁針のN極が北を向いているということであり、この向きを磁界/磁場の正方向であると定義します。

次に、この実験装置に電子を流してやると、4個の方位磁針の赤い部分は反時計方向に向きます。これは、磁界/磁場が回転磁界として現われて、その回転の向きは反時計方向ということが分ります。

これらの実験結果から、電子の流れ方向に対して磁界、磁場は反時計方向の回転磁界となることが確かめられました。これは、仮想電流がつくる回転磁界の例えとしての「右ネジの法則」に対して、電子流の場合には回転磁界の方向を逆に考えればよいということになります。これはまた「電子流とコイルによる磁極の関係」で述べた、電子流とN極の関係を左手の指を使って考えることと、矛盾のない結果になっています。

磁極の向きについては、物理的に定まった方向というものがあるのかどうかといわれると、それは基準をどのように決めるかという定義の問題だと考えられます。俗な言葉でいうと、「犬が西向きゃ尾は東」という具合に、方位磁針が北を指す向きを正とするか、南を指す向きを正とするか、最初の定義によって方向が変わってきます。ここでは、すべて方位磁針が北を指す向きを正の向きとして議論しています。また、導体中における電子の流れ方向については、実際に起こっている物理現象であり、逆に仮想電流(導体中をプラス側からマイナス側に流れるとされる)は実際の物理現象ではなく仮想的なものであるということになります。